2016年10月18日火曜日

ミニ古書フェア『吉原の中の人』開催します

10月22日(土)より、『吉原の中の人』と称して、ミニ古書フェアを実施致します。

1657年の明暦の大火により現在の地に移転してきた新吉原遊廓。当地は遊廓として世界的に有名ですが、その吉原の出身者が書いた作品も多く残っていることは、あまり知られていません。

当フェアでは、近現代の作品を中心に、吉原出身の人物が残した作品のみに絞って、古書を展示販売致します。

・場所:カストリ書房店内(台東区千束4-11-12)
・会期:2016年10月22日(土)〜同23日(日)

一口に「吉原の人たち」といってもバラエティ豊か。吉原随一の妓楼の息子、茶屋の女将、娼妓たちが検黴した吉原病院院長、戦後にトルコ風呂(ソープランド)を創業して日本一のグループにした男、戦後の赤線女給、吉原が好きすぎて元妓楼のアパートに住んだ作家、吉原で赤線を経営した経歴を持つ脚本家…。

当フェアに出品する本たちを一部ご紹介します。

福田利子『吉原はこんなところでございました』

昭和61年発行。花魁道中をショーとして復興させた、吉原の引手茶屋「松葉屋」の女将である福田の著作。愛人の子して生まれた福田は、引手茶屋の幼女となる。戦後は半年ほど赤線を経営して、料亭へ転業、若干30歳過ぎで料亭を継ぐ。花魁道中を復興させ、伊ベニスへ遠征する至る。松廼家喜代作・喜久平、桜川忠七などの写真も。福田の署名入り、松葉家のパンフレット、新聞記事も同梱

高橋渉『女の組合』

昭和31年発行。売春防止法施行直前に発行された本書は、新吉原女子保健組合をモデルに、組合の内外で起きた出来事などを小説化。

雪吹周『売春婦の性生活』

昭和28年発行。吉原の赤線女給たちを検黴するために設置されていた、吉原病院院長の雪吹周(いぶき ちかし)が著者。街娼や女給など広汎な売春婦たちの出身地、学歴、転落の経緯、初交年齢、一晩の交接数、さらには性交時の体位まで統計調査。吉原病院は現在の台東区立病院の前身。

雪吹周『肉体の白書』

昭和24年発行。著者は同上、雪吹。上記は統計分析だが、本書は吉原病院で検診する中でのエピソード集。新吉原女子保健組合の会長を務める女子、ラク町の街娼なども登場。エッセイ調で読みやすいが、検診の様子など生々しい。

吉村平吉『吉原酔狂ぐらし』

風俗ライター吉村平吉の自叙伝。野坂昭如『エロ事師たち』のモデルともなった吉村は、吉原の元は遊廓として使われていたアパートに住んでいた。角海老ソープランドの創業者である鈴木正雄との逸話もイニシャルで登場。五十間通り(見返りの柳と大門の間のS字路)の当時の様子や、廓の北側に多かったという密淫売のことなど、他著には登場しない記述も見られ、吉村の活写によって活き活きと思い浮かべることができる。

新吉原女子保健組合『婦人新風』

昭和27年発刊された、吉原に努める赤線女給達が結成する組合の機関誌、その復刻版。売春防止法により、その後の生活に不安を感じていた女給たちによる生の声が聞こえる。同誌には女給たちのつくった詩や作文なども掲載され、それらは後に、手記集『明るい谷間』として発行されるに至る。改題は関根弘。

関根弘『小説吉原志』

昭和46年発行。前掲、関根弘による作品。タイトルは小説だが、中味はドキュメント。元吉原の女給であり、組合長の山田菊江という女を訪ねるところから物語が始まる。RAA設立した経緯の下りでは、吉原三業組合トップの成川敏が会合をリードしたとある。成川の活動については謎も多く、貴重な証言である。街娼、白線、青線と戦後は売春の形態が多様化する中で、公に認められ納税もしていた女給にとって、それら未納税の淫売を許容し、自分たちのみを締め上げる売春防止法は片手落ちの法律であった。

市川伊三郎『新吉原遊廓略史』

昭和11年発行。戦前の新吉原三業組合長であった市川伊三郎が発行した吉原の沿革史。中世から戦前までを解説。非売品として発行された。

台東区役所編『新吉原史考』

昭和35年発行。台東区役所が売防法施行の2年後に編集発行した吉原史。行政が遊廓を取り上げた珍しい書。吉原の地名解説など、ともすれば伝承的な曖昧さが多いジャンルもしっかりと考証がなされており、信頼性の高い内容となっている。

古書のため現品限り。貴重な署名本もございます。是非、ご来店下さい。

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